水溜りのホップロック


   01

 空が青い。
 わたしたちの心の痛みや苦しみをまるで知らないかのように、どこまでも澄み拡がっている。
 水面も青く、底が見えるまで透き通っている。
 だが、その中で暮らす人々の心の痛みや苦しみを反映して、空の色よりは少し昏い。わたしたちは空と水の狭間にいて、純粋と狂気の板ばさみ、世界と心の境界線を堅牢に築き上げすぎた。それでも空を見上げるし、たゆたう水に気持ちを落ち着ける。どんなに死んだ目をしていても、心はまだ死んではいない。
「ん、なんだ、スイリ、もう起きたのか」
「うん……」
「あー、今何時ぐらい?」
「わからない。でも太陽が真上にあるから、きっとお昼だよ」
「そうか……。今日も、暑いな……」
「うん……」
 わたしがそう答えると、彼は再び目を閉じた。わたしはベンチで寝ている彼を見ず、日がな眼下の水面を眺め続けた。
 
 
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